駐妻歴13年、もはやプロ駐妻のちょんぷーです。
今回は「駐妻のキャリア分断」について、まとめました。裏付けとなるような調べた情報も追記しています。
元キャリアコンサルタント・人事としてHRに携わってきた身からすると、これは根が深く、社会にとっても大きな損失だと感じています。
駐妻は基本的に働けない
タイをはじめ、多くの国では「ワークパーミット(労働許可)」がないと就労できません。 そしてワークパーミットは、企業側の資本金や最低賃金など細かい規定をクリアしないと発給されないため、企業にとっても簡単な手続きではないのです。日系企業では、そもそも帯同家族の就労を禁止しているケースも多くあります。
「シンガポールなら帯同ビザでも働ける」と言われることがありますが、これは古い情報です。2021年5月の制度改正により、帯同ビザ(DP)保持者がそのまま就労する仕組みは原則廃止されました。今は、雇用主が別途就労ビザを取得するか、自分自身が個人事業主として登録するかのどちらかしか、現実的な選択肢がありません。制度は年々厳しくなっていると考えたほうがよさそうです。
タイでもビザの壁をクリアして働いている駐妻はいます。ただし簡単な道のりではありません。あとはボランティアという選択肢が現実的です。
フリーランスやクラウドソーシングの仕事がどう扱われるかは国や会社によって差があるので、判断は慎重に。ただ、登録だけしてみると求人の相場感がつかめるのでおすすめです。
海外で許可なく教室を開いて収入を得るのは危険です。ビザはく奪や強制送還につながることもあります。「オンラインで仕事しています」がNGになるケースもあるので、注意しましょう。
データで見る駐妻のキャリア分断
「なんとなく大変そう」ではなく、実際の数字を見てみましょう。
- 元駐在妻を対象にした調査では、帯同前の正社員雇用比率は78%だったのに対し、帰国後の再就職では29%まで下がっています。パート・アルバイトが最多層となり、待遇も下がるケースがほとんどです。月収10万円未満の人の割合も、帯同前の3.5%から帰国後は約30%へと急増しています。
- 再就職にあたって駐在妻が感じる課題は「ブランク」「年齢」「育児との両立」「今後の見通しが不透明」の4つが上位。特に30代後半から40代前半という、キャリア形成において重要な時期にブランクが生じやすいことが指摘されています。
- 駐妻キャリア総研の調査によれば、駐在員を送り出す企業のうち、配偶者へのキャリア支援を行っているのは約3割にとどまります。一方で配偶者の9割以上が、いまの企業のキャリア支援に満足していません。求めているのは語学学習の補助よりも、就労許可や求人情報の提供だといいます。
- 悪い話ばかりではありません。「現地での就労を希望した駐妻」の7割超が内定を獲得しているという調査結果もあります。ビザ、配偶者の会社の規定、子どもの預け先という壁を越えられれば、道は開けるということです。
- メンタル面では、帯同中に約8割の駐妻・駐夫が何らかのメンタル不調を経験しているという調査もあります。自分だけがつらいわけではない、という事実は覚えておいて損はありません。
キャリアを取るか、家族を取るか
大きな問題になるのは、
- 自分のキャリアを取るのか
- 家族で一緒に暮らすのか
という二択に見えてしまうことです。
日本から帯同する場合、仕事を辞めざるを得ない人はたくさんいます。逆に、現地で仕事を始めて、夫の帰国後もその国に残る選択をする人もいます。
子どもが小さいうちは「家族一緒にいたい」という思いから、キャリアをいったん手放す人も多いでしょう。同じように、ヨーロッパでは男性が主夫になる家庭も珍しくありません。ママ友ならぬパパ友もいますし、あえて離れて暮らしながら、それぞれ仕事を続けている家族もいます。
最近は少しずつ変化も出てきています。配偶者の海外転勤時に休職できる制度を導入する企業や、帰国後の再就職支援に力を入れる企業も現れ始めました。「キャリアを諦めない駐妻・駐夫」というロールモデルも増えつつあります。
駐妻としての自己肯定感は低下しやすい
タイに来て駐妻になり、今までバリバリ働いてきたのに急に時間ができて、何をすればいいのか分からない。そんな状態に陥る人は少なくありません。
夫は慣れない仕事に追われ、家族のフォローまで手が回らないこともあります。「私はなぜここにいるのだろう」「私の価値は何だろう」と、つらい思いを抱える人も多いはずです。
駐妻を見下すような言動をする人もいるので、深く傷つく場面もあるでしょう。「夫からお金をもらって生活すること」自体に耐えられないという声もよく聞きます。
完璧主義な人ほど自己肯定感が下がりやすい傾向があります。謙遜ならいいのですが、必要以上に自分を責める必要はありません。
それでも、駐妻の経験は「強み」になる
ここではっきり伝えたいのは、駐妻としての時間は「キャリアの空白」ではないということです。
人材紹介の現場でも、駐在妻は転職市場で評価されやすい層だと言われています。理由は主に3つです。
- もともと大卒・総合職としてキャリアを積んできた人が多いこと
- 海外生活で鍛えられた語学力
- 予測できないトラブルを乗り越えてきた課題解決力と柔軟性
学生時代やキャリア初期に培った「考える力」「仕事を進める力」「チームで働く力」は、数年のブランクで簡単に失われるものではありません。むしろ海外生活の経験が、新しい価値を積み増していると考えるべきでしょう。
ボランティアという選択肢
タイではボランティア活動をしている駐妻も多くいます。
ちょんぷーも、友人限定でボランティアとして転職サポートをしたことがあります。職務経歴書の添削や簡単なキャリア相談、案件のリサーチなど、企業に所属していないのでできることは限られていますが、できる範囲で情報を提供しています。
企業に入った友人からマーケティングを頼まれることもあります。こういう依頼があると、やはり気持ちが上がるものです。仕事としてできたらいいのに、と感じます。
ブログを始めたのも、リハビリのようなものでした。サーバー代など運営費も想像以上にかかり大変なことも多いですが、一人でここまで作れたことは自分でも褒めています。
帰国後のキャリアを見据えた過ごし方を
ブランクは、間違いなく損失です。ちょんぷー自身、13年も企業から離れていることに焦りを感じています。
しかし、ブランクが長くても可能性はあります。帰国後に起業した友人、リモートワークを続けている人、まったく違う業界に飛び込んだ人、前の会社に戻った人。道は一つではありません。
帰国後を見据えて、今からできることをいくつか挙げます。
- 資格を取る:ただし資格は厳選し、本当に必要なものだけに絞りましょう。数を集めても評価にはつながりません。
- 語学力を伸ばす:英語が話せるようになることは、選べる仕事の幅を確実に広げます。
- ITスキルを身につける:オンラインで完結するスキルは、帰国後もそのまま活かせます。
- 現地就業・リモートワーク・ボランティアを経験しておく:帯同中に何らかの形で「働く経験」を積んでおくと、帰国後の再就職や収入面でプラスに働きやすいという調査結果もあります。
- 夫婦で対話する時間を作る:週1回以上、キャリアについて夫婦で話している人ほど「キャリアに良い影響があった」と答える割合が高いというデータもあります。一人で抱え込まないことも立派な準備です。
ちょんぷーも、苦手だったSNSを勉強し、ライフコーチングの資格を取り、帰国後の起業に向けて情報収集をしています。可能性は無限大だと思っています。
働いていないから価値がないわけではない
家族のためにキャリアを犠牲にして、異国にやってきたこと。それ自体が、大きな決断です。
価値がないわけではありません。なかなかできることではないので、悲観的にならないでほしいのです。
もし夫がひどい言葉を投げかけてくるなら、言い返していいのです。弱気になる必要はありません。モラハラも少なくないと聞きます。そんなときは、一人で抱え込まず相談してください。
家族を支える決断をしたことに、誇りを持ってほしいと思います。
自分をご機嫌に持っていく方法
ひたすらダラダラしていい
慣れるまでは、意識高く過ごそうとしなくて大丈夫です。まずはゆっくり、のんびりも楽しんでみましょう。ちょんぷーは「ひたすら楽しむ」と決めて、仕事とは関係のない習い事に手を出し、自己満足しています。
趣味を充実させる
時間ができたら刺繍をしたり、体を動かしたり、友達と話したり。ストレス発散になることに、迷わず時間を使いましょう。
人と比べない
帰国して輝いている友人、実家が太い友人、資格をたくさん持つ友人と比べても仕方ありません。駐妻の世界には、そういう人が案外たくさんいます。
人と比べたり、人の目を気にしたりしないようになってから、生きるのがぐっと楽になりました。つらい人間関係からは、思い切って離れましょう。
自分をたくさんほめる
「今日も自分、頑張ったな」と声に出してあげましょう。ちょんぷーは自分に甘いので、褒めまくっています。
昔はストイックな完璧主義で、鎧をまとっているようだと言われたこともありました。子どもを産んでからは、すっかり別人です。
一日楽しかったな、明日は何をしようかな。そんなことを考えられるのは、今しかありません。自分がご機嫌でいれば、家族もご機嫌になります。感謝を忘れずに過ごせば、それで十分です。

まとめ
キャリアで悩んでいる方、家族との関係に悩んでいる方。一人ではありません。
数字で見ても、駐妻のキャリア分断は個人の甘えではなく、社会構造の問題だということが分かります。だからこそ、正しい情報を持って、今からできる準備を始めることが何より大切です。
私たちは十分に頑張っています。できるだけ自分に甘く、褒めて、楽しく過ごしていきましょう。

