「海外駐在なんて、優雅で羨ましい!」
日本にいると、周囲からそんな言葉をかけられること、よくありますよね。
確かに、手厚い住宅手当や赴任手当、お手伝いさんやドライバーさんの手配など、外から見れば「羨むような恵まれた環境」に見えるのかもしれません。
でも、元人事の目線、そして実際に海外で子育てをしてきた家族の目線から言わせていただくと……海外駐在ファミリーって、実は全員がそれぞれの場所で心身を削りながら必死に戦っているのがリアルな姿なんです。
赴任先でメンタルを崩してしまう駐在員や、強い孤独感に苛まれる駐妻(駐在員の妻)。
みんながみんな、過酷なアウェイの環境に強いわけではありません。
今回は「海外生活の本当の苦労」と、このアウェイな環境でも夫婦・家族で笑顔で乗り越えるための「円満のコツ」、そして企業の人事(HR)が考えるべきサポートについてお伝えします。
ちょんぷーとっても素晴らしい13年間になったことは感謝でいっぱい!でもその裏には家族それぞれ泣いた日々も、友達から相談を受けたこともたくさんありました。

海外に来た途端「謎の全能感」を背負ってしまう駐在員たち
海外赴任の隠れたあるあるとして、元人事の立場からもよく見てきたのが「現地でちょっと偉そうになっちゃう夫問題」です。
日本ではごく普通のサラリーマンだったはずなのに、海外に来た途端に急に強気になったり、家庭内で高圧的になっちゃったりするケース、実は少なくありません。
- 会社持ちの高級マンションや手厚い手当
- 運転手さんやお世話をしてくれるスタッフがいる生活
- 上位ポジションになり個室が与えれる
- 現地スタッフから「駐在員様」として扱われる
会社ごとに程度の差はありますが、これらが重なると無意識のうちに「俺の実力でここまで来た」「俺が家族を養ってやっている」と壮大な勘違いを起こしやすくなってしまうんですよね。
「モラハラ夫」化したり、コソコソ不倫したりする例を何組も見てきました。駐妻ネットワークには一瞬で広まるので、背後から冷たい目線を投げられてるのに気づいていません。
全く「変わらない夫」へのリスペクト
正直、私だったらちょっと浮かれて偉そうにしちゃいそうな気もするのですが……(笑)。
世間ではそうやって環境の変化で「謎の全能感」を背負ってしまうケースもある中、環境が変わってもまったく態度が変わらず、威張ることもなくブレない夫を見ると、「この人は本当に人間として軸がしっかりしているんだな」と心から尊敬しました。
手当や肩書に振り回されず、平然といつもの自分でいられること。それ自体が、実はものすごく大きな価値なのです。
駐妻のリアル:キャリアの中断と「昭和の接待ゴルフ」の陰で
一方で、「海外でカフェ巡りやランチをしていて楽しそう」と思われがちな駐妻ですが、その胸の内は葛藤と孤独でいっぱいです。
自身のキャリアを一時ストップして渡航する切なさ。慣れない言語での買い物や病院通い、子どもの学校の手続きや送迎。
ただでさえストレスが大きい環境なのに、頼みの夫は仕事や「昭和から時が止まったような不毛な接待ゴルフ(笑)」で週末まで不在がち。
ちなみに、子どもたちも言葉の壁や最新の受験環境の中で影で泥臭い努力を重ねています。こちらのリアルについては[帰国子女は本当にずるい?海外経験だけでは身につかない英語力と見えない努力の話]でも詳しく書いています。
「頼れるのは自分だけ」というプレッシャーの中で、家と子どもを守り続ける駐妻の孤独感は、経験した人にしか分からない過酷さがあります。
海外生活で「家族が壊れない」ための夫婦円満・家族円満3つのコツ
手当や待遇というチャンスがある反面、家族全員がアウェイの環境でストレスを抱えやすいのが海外生活の難しさ。
この過酷な環境を「最高の思い出と成長」に変えるために、我が家が大切にしてきた円満のコツがあります。
① お互いの「見えない戦場」を尊重し合う
「仕事で疲れている」「家にいるだけで楽」とお互いを叩き合うのは一番危険。 夫は職場のプレッシャーや厳しい社内政治、尋常じゃない仕事量、妻は言葉の通じない土地での生活防衛とワンオペ育児——「お互いが違うアウェイの場所で戦っている大切なパートナー」としてリスペクトし合うことが、円満の第一歩です。我が家は戦友のような感じでしたね。共に戦い抜きました。
② 当たり前の中に「リスペクト」を見つける
環境が変わっても調子に乗らず家族を思いやる夫、慣れない土地で手探りで家庭を守る妻。家族の当たり前のような頑張りや、変わらない良さに気づき、言葉にして感謝を伝えること。「この人はすごいな」とお互いをリスペクトできる関係が、揺るぎない夫婦の軸を作ります。
③ 誰かの犠牲にならず「ママ自身が一番楽しむ!」
「夫の都合」「子どもの教育」だけに振り回されて犠牲者になってしまうと、家庭の中にモヤモヤした不満が溜まってしまいます。 「せっかくこの国にいるんだから、私が一番楽しんでやる!」という図々しさ(笑)こそが、家庭を明るく照らす太陽になります。
子どもたちや夫から「ママばっかり楽しんでるじゃん!」と言われるくらい、大人が自分の人生を全力で楽しむ姿を見せることが、実は一番の家族円満の秘訣です。
大変なことも嫌なことも、未来への不安ももちろんありました。でもそれも吹き飛ばすくらい、私が一番楽しんでいたことは家族にとってもプラスになったはず……!さらにいろんな力を身につけた私は最強!!(そう信じています笑)
人事(HR)がやるべきことと責任:海外赴任は「家族の一大事」
海外赴任は単なる社員一人の異動ではなく、家族全員の人生を巻き込む「一大プロジェクト」です。だからこそ、企業の人事(HR)には現場に寄り添った伴走が求められています。
さすが素晴らしい企業だなと感じたサポートも実際にあります。本社でデスクワークをしているだけではわからないヒトゴトでない人事。これからの時代、以下のような支援が必要だと強く訴えたいです。
【企業(HR)に求められる駐在ファミリー支援】
1.「家族を一番に大切にしなさい」という明確なメッセージ発信
2. 帯同する配偶者の「キャリアとメンタル」への手厚いケア
3. 帰国時期の早期計画と明確な提示
①「家族を一番に大切にしなさい」と企業がメッセージを出す
過剰な接待や不毛な付き合いを強いらない空気作りが必要です。「社員が健康で、家族が笑顔で過ごせているからこそ、良いパフォーマンスが出る」という姿勢を、企業メッセージとして明確に発信してほしいと感じます。
② 帯同する配偶者の「キャリアとメンタル」への配慮
キャリアを諦めてついてきてくれた配偶者に対し、企業としても感謝とリスペクトの姿勢を持つこと。特に、妻がキャリアを中断してついてきているということは並大抵のことではありません。オンラインでのキャリア支援やメンタルヘルスケアなど、妻側へのサポート体制を整えることが、結果として駐在員の離職防止やパフォーマンス向上につながります。
③ 帰国時期の早期計画と提示
子どもの受験や学校選び、配偶者の復職準備など、帰国は家族にとって最大の転機。「半年前の内示」でも遅すぎるくらいです。家族の一大事だからこそ、余裕を持って次の人生を設計できるよう、企業側が早期から計画的に帰国シミュレーションを共有していく視点が不可欠です。
帰国後の離職も一定数あるので(正直かなり多い)本人との納得感を擦り合わせる必要もあるように多いと感じます。
まとめ:どこにいても「今が一番楽しい」を更新しよう!
海外赴任は、確かにお金や経験という面で大きなチャンスを与えてくれます。
でもそれは、「駐在員も駐妻も、家族全員が泥臭い苦労や孤独を乗り越えた先にあるもの」です。
外からの「ずるい」「優雅でいいね」という無神経な言葉に振り回される必要はありません。見えないところで苦労し、夫婦で、家族で支え合って乗り越えてきた経験は、絶対に崩れない家族の強さになっています。
帰国した今も、「あの頃に戻りたい」ではなく「今が一番楽しい」と思っています。
日本でも海外でも、どこに住んでいても自分らしくたくましく、人生を楽しんでいきましょう!

